二度寝したらおかしな夢を見た。
高校時代の部活の面々と、社会人になって最初に本配属になった部署の先輩方が全員集まっており、平日はホテルで接客をし、休日は部活のトレーニングをする。そんなひとつの団体だ。
私はそれなりに上手く人間関係を構築していた。ところがある日突然、これまでの関係が嘘のように綻び始める。人とコミュニケーションが上手く取れなくなったのだ。人の出す何気ないサインを見逃し、人の言葉の真意を察することが出来ない。言葉を選べない。頓珍漢な返答しか出来ない。これまで出来ていたことが出来ない。私は焦り、余計に空回る。周囲は困惑し、私は孤立した。私に声をかけてくれていた最後のひとりは友人のアユミだったのだが、私は余裕がないあまりアユミにも辛く当たり、彼女は何も悪くないのに謝らせてしまった。アユミの背中を見ながら、私は絶望に打ちひしがれる。アユミに謝りたい。アユミの背中が遠くなる。トレーニング中だから列を離れてはならない。でももう追いたくない。みんな走って行く。全力で追ってるつもりなのにどんどん離れて行く。待って、いや、待たなくていいのかも、私がいたって、だって…
そんな私に声をかけてきたのは、小中学校のとき同級生だった澤くんだった。夢の中の世界では、澤くんは我々のマネージャーで、メンバーのサポートをする役割だった。あー来たよ来たよ、仕方なく来たよ…。遂に顧問は澤くんを寄越したかと私はため息をついた。一番苦手なタイプ…。こんな時に喋りたくないのに…。
「ねー、そう深刻になりなや」
澤くんはにやにやしながらそう言った。
あんたに何がわかるんだ!と私は唇を噛む。でも、苦手な澤くんにすら話しかけられて救われた気持ちになるほど、私は追い詰められていた。
「…おかしなこと言っていい?!」
私は澤くんの両肩をがっしりと掴み、叫ぶ。
「うん、どうぞ」
「私、人と話すのめちゃくちゃ苦手なが!!!」
「ええ?接客業しゆうのに…?」
「接客しよっても苦手なもんは苦手ながー!」
人と話すのが苦手だ。
だけど、人と話したい。
人と繋がりたい。
信頼し合いたい。
なのに突然それが出来なくなった。
どうしたらいいかわからない。
つらい。かなしい。
助けてほしい。
澤くんに捲し立てていた台詞をそのまま口にしながら目が覚めた。起きてしばらく涙が止まらなかった。今の所、特に自分自身の人間関係で悩んだりはしてないんだけど、なんだったんだ今の夢…何故澤くん…?と思いつつ、泣いた。あの夢の世界の私はアユミに謝れたのだろうか。澤くんは私に何て言ったんだろう。ていうか澤くん今どこで何してんだろう。変な夢だった。今度アユミに会った時に言ってみようかな。恥ずかしいからやめとくか…。